住宅ローンが残ってる自宅を手放さずに債務整理できるのが個人再生
改正貸金業規制法の影響で、個人再生が実施されている件数自体は減少傾向にありますが、住宅ローンが残ってる自宅を手放さずに債務整理できるという強力なメリットがある個人再生という債務整理手段を選ぶ人がいます。
個人再生が実施されている件数
このページでは、次の3つのテーマで「債務整理の個人再生手続」に関連したお話をします。
- 個人再生を行うことができる条件について
- 個人再生を行う際に費用がどれぐらいかかるのか
- 個人再生で残せる資産と残せない資産
個人再生を行うことができる条件について
「個人再生」は、もともとは法人を対象としている民事再生手続を、個人でも利用できるように設けられた手続です。
この個人再生には、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」という2つの手続が用意されています。
個人再生のうちでも基本類型となるのは、小規模個人再生です。給与所得者等再生は、小規模個人再生の特則と位置づけられています。
簡単に言ってしまえば、自営業者の人の場合は小規模個人再生、サラリーマンの場合は給与所得者再生が手続きとしては向いているといえます。
しかし、小規模個人再生の方が給与所得者等再生よりもメリットが大きい部分があることから、給与所得者であっても小規模個人再生を利用するのが多いようです。
なお、自営業者が給与所得者等再生の手続きを選ぶことは認められていません。
①小規模個人再生を行うことができる条件
- 債務者が個人であること
- 住宅ローンを除いた借金総額が5,000万円以下
- 今後3~5年の間、継続的に収入を得る見込みがある人
- 再生計画案で減額された借金を、3年(例外で5年)で債権者へ返済できる人
②給与所得者等再生を行うことができる条件
- 小規模個人再生の条件を全て満たしている人
- 給与などの定期所得があり、所得の変動が年間20%以下であること
- 一度破産をしている場合は、免責が確定して7年以上経過している人
では、個人再生を利用できない人についても紹介しておきましょう。
当たり前のことながら個人再生を利用することができない人は、個人再生を利用するための条件を満たしていない次のような個人債務者です。
①継続的な収入が見込めない人:個人再生は3年に渡って返済を続けることが必要ですから、継続した収入が無いと利用できません。
この入の種類について制限がないことから、パートやアルバイトの収入、自営業や個人事業主でも、継続的に収入があれば問題ありません。
ただし、生活保護費は借金の返済に使うことができないことから、生活保護受給者の個人再生利用は不可能です。
②借金の総額が5,000万円を超えている人:個人再生ができるのは5,000万円以下の無担保の借金です。
ですから抵当権が設定されている住宅ローンなど、「担保されているものにより返済がされる債権」は含めません。
つまり住宅ローン3,000万円と銀行カードローン100万円がある場合、個人再生で整理するのは銀行カードローンの100万円だけです。
住宅ローンについては、個人再生を行ったとしても抵当権を行使する方が優先されてしまうので、個人再生の対象債権には含めません。
個人再生を行う際に費用がどれぐらいかかるのか
個人再生は、裁判所に申立てを行う手続きです。
この個人再生を行うには2つの方法があり、「自分でする」「弁護士または司法書士に依頼する」のどちらかで裁判所に申し立てできます。
これらの方法で個人再生を行った場合の費用についてみていきましょう。
(1)債務者本人が個人再生の申立てを行う場合
必要書類が多く数十枚の申し立て書類の作成や手続きが複雑なため、多くの時間を割かなければいけなくなります。
裁判所が選任した再生委員の指導・監督を受けながら行うことはできますが、債務者本人が申立てを行うのはあまり一般的ではありません。
費用は収入印紙、切手、予納金など合わせて3万円程度です。
これだけだと費用は安いのですが、自分で個人再生の手続きを行う場合は裁判所が再生委員を選ぶケースがほとんどです。
再生委員とは、個人再生手続きを監督するために裁判所から選任された弁護士です。この再生委員が裁判所の補助機関として貸金業者と申立人の間に入って手続きを進めるのです。
この費用が15~25万円程度必要で、個人再生の申し立てから6カ月以内に支払わなければいけません。
この費用は手続きが終了した時点で再生委員の報酬としてなり、もし残金があれば申立人に返金されます。
債務者本人が個人再生の申立てを行う場合の費用は、次のとおりです。
なお、個人再生を行うと「官報」に掲載されますが、その費用も債務者が負担します。
(2)弁護士や司法書士に依頼する場合
弁護士や司法書士に依頼して個人再生を行う場合の費用は、裁判所へ支払う実費にプラスして報酬が必要です。
弁護士に依頼した場合の報酬は30~50万円程度が相場で、司法書士より報酬は高くなります。
司法書士より弁護士のほうが法律で認められた訴訟代理人としての範囲が広く、あらゆる裁判手続きを任せられるので、忙しい人にとっては好都合です。
司法書士に依頼した場合の報酬は、25~40万円程度が相場です。
司法書士は書類作成と提出が主な仕事であることから報酬が抑えられますが、その分債務者本人が行わなければならない作業も多くなります。
なお、司法書士に訴訟代理権が認められているのは訴額140万円までの簡易裁判所管轄の訴訟までで、地方裁判所における訴訟代理権は認められていません。
自宅不動産の場合は金額が訴額140万円以上の高額になる事が多いので、弁護士事務所にお願いする事になります。
ただ、個人再生は自分で申し立てる事が可能ではありますが、基本的に手続きが難かしく、多大な学習時間とやり方自体を調べる時間が必要になり、とても仕事をしながらできるような事ではありません。
複数の法律事務所で相見積もりを取って、どこで依頼するのが安いのかを調べて、相談した時の感触を考えて依頼していくのがいいと思います。
個人再生で残せる資産と残せない資産
債務整理では、資産を処分しなければいけない手続には「自己破産」と「個人再生」があります。
自己破産の手続を行うと、1点で20万円を超える資産を残せません。住宅や車はもちろんのこと20万円以上の生命保険の解約金や預貯金も残せないのです。
個人再生の場合は、自己破産に比べれば多くの資産を残せる手続と言えます。
個人再生を行った場合に残せる資産は、返済額までです。
例えば、個人再生を行った結果、借金の返済額が100万円に減額できたとしましょう。
その場合には、100万円までの資産については処分せずに済みます。
ただし、自己破産のように1点ではなく資産の合計金額です。
そのことから、例えば200万円の資産がある場合、仮に個人再生を行って借金を100万円に減額できるとしても、100万円にしないで返済額を200万円に設定します。こうすることで、200万円の資産を残すことができるのです。
なお、住宅に関してはローンを返済中であっても、「住宅ローン条項付の再生計画」が認可されれば、ローンを払い続けながら借金を減額することが可能です。
このように、住宅ローンを除けば返済額までの資産を残せますが、残せない資産について見てみましょう。
個人再生で残せない資産は、返済金額以上の価値のある資産です。
そうした資産は処分し、それを返済に充てることになります。
いわば資産をとるか返済をとるか、債務者自身が選択しなければなりません。
特に注意しなければならないのが自動車です。
ローンを完済してしまっている自動車であえば、資産として残すことができます。
しかし、ローンの返済中であればそのローンの債権者に所有権があるので、その自動車を取り上げられてしまう可能性があります。
自動車ローンが残っている状態で個人再生をする場合には、この点に注意が必要です。
住宅ローンが残ってる自宅を手放さずに債務整理できるのが個人再生:まとめ
個人再生を行うことができる条件について
・小規模個人再生を行うことができる条件
①債務者が個人
②住宅ローンを除く借金総額が5,000万円以下
③今後3~5年の間、継続的な収入を見込める人
④減額された借金を、3年(例外で5年)で返済できる人
・給与所得者等再生を行うことができる条件
- 小規模個人再生の条件を全て満たしている人
- 定期所得があり、その変動が年間20%以下
- 破産経験者は、免責が確定して7年以上経過している人
個人再生を行う際に費用はどれぐらいかかるのか?
・債務者本人が個人再生の申立てを行う場合の費用は、記事内の表を参照のこと。
・弁護士や司法書士に依頼する場合の費用は以下のとおり。
①弁護士の報酬は30~50万円程度が相場
②司法書士の報酬は、25~40万円程度が相場
個人再生で残せる資産と残せない資産
- 個人再生の場合は返済額までの資産を残せる。
- 「住宅ローン条項付の再生計画」が認可されれば、住宅を手放さないで借金を減額できる。
- 個人再生で残せない資産は、返済金額以上の価値のある資産
- 自動車ローンが残った状態で個人再生をすると、債権者に取り上げられる可能性がある。
文中でもお話しさせていただいた通り、個人再生は自分で申し立てる事が可能ではありますが、基本的に手続きが難かしく、多大な学習時間とやり方自体を調べる時間が必要になり、とても仕事をしながらできるような事ではありません。
複数の法律事務所で相見積もりを取って、どこで依頼するのが安いのかを調べて、相談した時の感触を考えて依頼していくのがいいと思います。
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