借金ごと遺産相続する時の注意点!マイナス資産の借金もある時の対処法
カードローン契約者が死亡した場合、契約はどうなる?
借金を抱えている人の多くは、「死ぬときまでには借金をゼロにしておきたい!」と考えると言われます。
しかし死期は、必ずしも年齢に関係がないことから、いつ訪れるか分かりません。
もしカードローン契約者が死亡した場合、そのカードローンの借入残高の支払いは、どのようになるのでしょう。
また自分自身が死亡したカードローン契約者の法定相続人の場合、どのように対応すればいいのでしょう。
カードローン利用者の中には、死んでしまった後のカードローンのことなどどうでもいいと思っている人がいるかもしれませんが、残された人の為にもこの記事に一度目をとおしてください。
相続は資産だけではなく負債も承継します!
相続においては、死亡した被相続人が持っていた「プラス遺産」だけではなく、「マイナス遺産」も一緒に民法上の法定相続人に承継され(受け継がれ)ます。
プラス遺産とは、土地や建物の不動産・現金や有価証・家財や自動車・書画や骨董品などの動産を指します。
マイナス遺産とは、買掛金や住宅ローンの借金・未払いの所得税や住民税・未払医療費や家賃などを指します。
相続人は被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継ぐのですから、相続する遺産が最終的にプラスになるかマイナスになるかは分かりません。
プラス遺産よりもマイナス遺産が多ければ負債を背負うことになり、マイナス遺産よりもプラス遺産が多ければプラスの遺産を受け継ぐことになるのです。
カードローンの相続について見てみましょう。契約者が死亡した場合のカードローンの借入金は、マイナス遺産として相続人が受け継ぎます。
相続人は法律の定める順番に従いますから、配偶者・親・兄弟姉妹などがマイナス遺産のカードローンを承継し被相続人に代わって借入金を返済していかなければならなくなります。
相続人にとってみれば、カードローンの借入金額よりも高額なプラス遺産も受け継ぐのであればある程度納得できるでしょう。しかし、突然にマイナス遺産を背負うことになるのですから大変です。
相続を免れることは可能です!
相続人は死亡した被相続人が持っていたプラス遺産もマイナス遺産も受け継がなければならないと説明しましたが、これでは相続人の意思は全く無視されてしまいます。
そこで法律では相続する財産がマイナスの場合を考慮して、相続人に対して「相続をするのか(承認),相続をしないのか(放棄)の選択権」を付与しているのです。
具体的には、「限定承認・相続放棄・単純承認」の3つの選択肢が設定されています。
それぞれの選択肢について、簡単に説明しておきましょう。
「限定承認」とは、相続を承認して相続財産のプラス遺産とマイナス遺産を受け継ぐものの、マイナス遺産の弁済は相続で得たプラス遺産の範囲内に留める方法です。
したがって債務超過であっても、相続人自身の個人財産で弁済する責任は負いません。
相続はするが被相続人のマイナス遺産は相続したプラス遺産で弁済し、もしプラス遺産が多ければ、それを相続するという方法です。
遺産がプラスなのかマイナスなのかが分からない場合には、限定承認を選択しておくとマイナス遺産が多かってもそれを背負わずにすみます。
この限定承認を行う場合は、「相続が自己のために開始されたことを知った日から3カ月以内」に財産目録を作成し、家庭裁判所に「限定承認申述書」を提出しなければなりません。
また、相続人が複数の場合は全員で行うことが必要ですから、相続人の中に1人でも反対者がいる、限定承認を行えなくなります。
「相続放棄」とは、相続人としての地位を離れ、全ての遺産(プラス遺産とマイナス遺産)の承継を放棄する方法です。
相続人は必ずしも相続を承認する必要はないことから、マイナス遺産が多く相続に魅力が感じられないケースなどには、相続する権利を自分の意思で放棄できるのです。
相続放棄を行うと、その人は相続開始の時点から相続人でなかったものと見なされます。
ですから相続人は同順位や次順位の相続人が繰り上がり、相続権はその相続人に移るのです。
相続放棄を行うためには、自己のために相続が開始されたことを知った日から3カ月以内に、家庭裁判所へ「相続放棄申述書」を提出して手続きを行うことが必要です。
もし、この期間を過ぎてしまうと原則として相続放棄を行うことはできず、単純承認を選択したものと見なされてしまいます。
なお相続放棄をしても、被相続人の借金の連帯保証人になっている場合には、その借金の支払義務を放棄できません。
「単純承認」とは、被相続人の全ての遺産(プラス遺産とマイナス遺産)を無条件で全部を承継する方法です。
民法では単純承認が相続の本来的なパターンと想定していますから、相続人が「限定承認」「相続放棄」を選択しないで一定の期間(熟慮期間)が経過すると「単純承認」を選択したものと見なされます。
ですから単純承認を行うときには、家庭裁判所に対して申述書などを提出する必要はありません。
なお相続人はプラス遺産とマイナス遺産の価値を比較して、プラス遺産の価値がマイナス遺産を上回っていると判断すれば相続人にとってプラスになることから、単純承認を選択するケースが多いようです。
利用者が途中で亡くなってしまった場合、残りの借入額は誰に返済義務?
カードローンの利用者本人が死亡したときに残った借入残高は、基本的に、法律で決められた相続人へマイナスの遺産として相続されます。
「相続」と聞くとプラスの遺産を思い浮かべるかもしれませんが、マイナスの遺産についても引き継がなければならないのです。
しかし、実際には、相続には3つの方法があることからその中に1つの方法が採用され、「だれも返済しない」といったことになる場合があります。
相続の3つの方法とは、次のとおりです
①単純承認:民法では、この単純承認での相続を基本の相続と想定しています。
カードローン利用者の権利や義務を含めて、資産と負債のいずれの遺産に条件をつけないで行う相続のことです。
単純承認で相続した場合、資産の価値が上回っていれば相続人にプラスですが、負債の価値が上回っていれば相続人にはマイナスになります。
相続に単純承認を選択する場合には、相続人が相続をする遺産があることを知ってから3カ月以内に、家庭裁判所に届け出をする必要があります。
なお、届け出をしないと、単純承認で相続をするものと見なされます。
②限定承認:カードローン利用者が残した資産と負債の価値を差し引きし、資産の価値が上回れば差し引いた分の資産を引き継ぐ相続です。
負債が資産の価値を上回れば、資産の価値を超える負債分は相続しません。
相続する資産と負債の価値を比較して、資産の価値が上回っていると判断すれば相続人にとってプラスの相続になることから、限定承認を選択して相続します。
相続に限定承認を選択する場合にも、単純承認同様、相続人が相続をする遺産があることを知ってから3カ月以内に家庭裁判所への届け出が必要です。
③相続放棄:資産の価値より負債の価値が多い場合は相続によって負債を背負うことになるので相続人の権利と義務を放棄する相続です。
相続を放棄すればマイナスの財産(借金)を背負わずに済みますが、同時にプラス財産の相続も放棄することになります。
被相続人の遺産が、する意味がありません。
遺産に負債が多いことが分かれば、相続放棄をすることによって相続でなかったことになります。
なお、相続を放棄すると相続権が次の順位の相続人に移ので、相続放棄は原則として撤回できません。
カードローン契約者が死亡した場合の対処法
カードローンの契約者が死亡した場合にどのような対応方法があるかは理解できても、はたしてどの方法を選択すべきなのかは、遺産の状況や相続人の返済の可能性などによって異なります。
被相続人の遺産がカードローンの借入残だけで、その返済を相続人が引き受けるということであれば簡単です。
相続人が単純承認を選択し(家庭裁判所に対して申述書などを提出する必要はありません)、カードローン提供会社に「契約者が死亡したがどのように処理すればいいか」を問い合わせすれば、対処方法を知ることできます。
それにそって返済を進めていけばいいのです。
しかし現実には、「被相続人の遺産がカードローンの借入残だけ」といったケースはほとんどありません。
遺産相続では被相続人の全ての遺産(プラス遺産とマイナス遺産)を受け継がなければならないのですから、カードローンの借入残だけの承継もできません。
被相続人の全ての遺産(プラス遺産とマイナス遺産)を把握するのは簡単ではなく、相続人でも何をどのようにすすめていけばいいのか分からない人が大半です。
また、限定承認や相続放棄をするにしても「正式な承認・放棄の方法」や「家庭裁判所へ提出する書類の作成・手続方法など」も一般の人には対処の難しいことと言えるでしょう。
相続をする際に一番難しいのが、どのようなプラス遺産とマイナス遺産がありそれがいくらの価値があるかを確定することと言われています。
これが適切に行われていないと、相続人が想定されていなかったマイナス遺産を背負わなければならないといったリスクがあるのです。
こうしたことから、相続に関しての相談や手続きは専門家に依頼することをおすすめします。
とは言え、相続の場合、内容によって誰に頼むべきかが分かれます。
弁護士、税理士、司法書士、行政書士などが相続の相談に対応してくれますが、それぞれに専門分野があります。
ですから、まずは「相続相談センター」といったところで相談事項を説明し、何を・誰に・どのような手順で行うべきか指導を受けることをおすすめします。
借金と相続 死亡した場合、契約はどうなる?:まとめ
カードローン契約は相続人が引き継がなければならない。
- 契約者が死亡したからといって消滅しない。
- 死亡した契約者が残した遺産は、「プラス遺産」も「マイナス遺産」も民法上の法定相続人に承継される。
相続人は、次の3つの相続スタイルから選択・決定
- 「限定承認」:プラス遺産とマイナス遺産を受け継ぐものの、マイナス遺産の弁済は相続で得たプラス遺産の範囲内に留める方法。したがって債務超過であっても、相続人自身の個人財産で弁済する責任は負わない。
- 「相続放棄」:相続人は必ずしも相続を承認する必要はないことから、相続人としての地位を離れ、全ての遺産の承継を放棄する方法。相続人は同順位や次順位に繰り上がり、相続権はその相続人に移る。
- 「単純承認」:被相続人の全ての遺産を無条件で全部を承継する方法。プラス遺産よりマイナス遺産が多ければ負債を背負い、マイナス遺産よりもプラス遺産が多ければプラスの遺産を受け継ぐ。
カードローン契約者の死に直面した場合の対処法
- カードローンの契約者が死亡した場合にどのような対応方法があるかは理解できても、はたしてどの方法を選択すべきなのかは、遺産の状況や相続人の返済の可能性などによって異なる。
- 相続をする際に一番難しい「プラス遺産とマイナス遺産の価値の確定」「正式な承認・放棄の方法」「家庭裁判所へ提出する書類の作成・手続方法」などは、一般の人には対処の難しいこと。
- まずは「相続相談センター」といったところで、何を・誰に・どのような手順で行うべきか指導を受けることがおすすめ。
相続人が過払い金返還請求をできるの?
この質問に対しては、「遺産相続人から過払い金返還請求をできます」というのが答です。
過払い金は故人の遺産(相続財産)ですから、「相続放棄」をしない限り法定相続人が相続します。
遺産を放棄する場合は、原則として「相続開始時から3カ月内」に家庭裁判所に伝えなければなりません。
そもそも「過払い金を相続すべきかどうか」については議論のあるところですが、このサイトでは割愛します。
「過払い金返還請求できる権利」は、原則として「法定相続分」に応じて各相続人が相続されます。
だからといって、具体的な返還請求も相続人それぞれが法定相続分だけを請求する必要はありません。
相続人が過払い金返還請求できる権利を行使する方法は、次の3つです。
①相続人全員で請求する。
②各相続人が法定相続分だけを請求する。
③遺産分割協議で「過払い金返還請求できる権利」の相続人を決め、その相続人から請求する。
これらのいずれの方法でも返還請求が可能ですが、費用対効果を考慮して上記③が採用されるのが一般的です。
相続人からの過払い金返還請求をする場合には、次のような書類が必要です。
・遺産分割協議書:法律に定められた割合で相続する場合以外の場合には必要。遺産分割協議書には、相続人全員が実印で押印して印鑑証明書の添付も必要
・被相続人の戸籍:出生から死亡時までの全ての戸籍
・相続人全員の戸籍:相続人が誰か、がわかる戸籍謄本などが必要
・相続放棄申述受理証明書:相続放棄の相続人がいれば、家庭裁判所のこの証明書が必要
・遺言書:故人が遺産の分け方等を指定する遺言を残している場合には必要
なお、過払い金返還請求をする場合、特に注意しなければならない点があります。
それは、「相続人が過払い金請求をすると、相続放棄が出来なくなること」です。
他に過払い金より多額の借金があると、結果的に相続人がその借金を抱えます。
この問題を回避するためには、相続の種類として「限定承認」を選択します。
限定承認は、相続財産にプラスの財産もマイナスの財産があり、全体としてプラスになるのかマイナスになるのかわからないケースの際に有効です。
限定承認とは、被相続人に負債があった場合、その負債を被相続人の財産だけから弁済すればいいという方法での相続です。
ですから、負債が多くても相続人の財産を守れます。また、プラスになった場合には、そのプラスの部分の財産だけを相続できるのです。
なお、この限定承認を選択する場合は、相続放棄のケースと同様、「相続開始時から3カ月内」に家庭裁判所に伝えなければなりません。
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