特定調停の費用と裁判所に出向く回数は?
このページでは、次の3つのテーマで「債務整理のうちの一つ、特定調停手続き」に関連したお話をします。
・特定調停の費用と裁判所に出向く回数は?
・特定調停は法律の知識がなくてもできますか?
・特定調停で借金はどれくらい減額できる?
特定調停の費用と裁判所に出向く回数は?
特定調停は、支払不能に陥る可能性がある人が簡易裁判所に間に入ってもらって、債務整理をする手続きです。
手続き方法や作成・提出する書類が複雑でないことから、借金を抱える本人でも申立てが可能といわれています。
そこでこのサイトでは、自分で特定調停を行う場合の費用や裁判所への出頭に関して解説しましょう。
①特定調停にかかる費用
弁護士や司法書士に依頼をしないで自分で手続きをする場合、必要な費用は次の「収入印紙代と予納郵便切手代金」の2つだけです。ただし、金額は裁判所によって異なりますので注意してください。
・収入印紙代:貸金業者1社当たり500円
・予納郵便切手代:貸金業者1社当たり420円
ですから4社の貸金業者を相手に調停の申立をする場合は、(500円+420円)×4社=3,680円の費用がかかるのです。
このように特定調停の費用は、債権者が4社の場合でも合計で5千円以内におさまるのがほとんどです。
弁護士に特定調停を依頼した場合は着手金だけでも債権者1社につき2~4万円ほどかかるのですから、自分で特定調停をする方がはるかに安くなります。
②裁判所へ出頭しなければならない回数
特定調停の全ての手続きを自分で行うのですから、申立や調停委員との話合いなどのために、次のとおり裁判所に出頭しなければなりません。
・1回目:特定調停申立書をもらいに行く。
・2回目:申立書を提出する。
・3回目:調停委員が申立人から事情聴取され、返済方法などを話し合う。
・4回目:調停委員が債権者と交渉を行い、合意に向けた調整をする。
特定調停では、およそ月1回のペースで、3~4回調停が行われるのが一般的です。
ただし、債権者数が複数ある場合はそれだけ長引いて平日に裁判所に出廷する回数も増える可能性が高いことから、仕事との調整をしておく必要があります。
特定調停は法律の知識がなくてもできますか?
債務整理の手続きは法律の知識がない一般の人にはできないと思っている人が多いのですが、「特定調停」に関しては、法律の知識がない一般の人でもできるといわれます。
ではなぜ、申立人に法律の知識がなくても自分で特定調停をできる、といわれるのでしょう?
このサイトでは、質問に対する答も兼ねて「申立人に法律の知識がなくても自分で特定調停をできるのか」についてお話しましょう。
特定調停とは、言い換えれば「任意整理の任意交渉を、調停による話し合いで行う手続き」です。
つまり、任意整理の場合は「債務者か代理人の弁護士や司法書士」が「債権者」との交渉で和解を目指しますが、特定調停の場合は債務者に代わって調停委員が合意できるよう話合いを促進し、利害を調整します。
特定調停にこうした特徴があることから、次の2つの理由で債務者が自分でも特定調停をできるといわれるのです。
自分でも特定調停ができる理由① 手続きが簡単であること
特定調停の申立に当たっては、申立書などの書類に必要事項を記載して提出する必要があります。
これらの特定調停の必要書類の数が少ないうえに記入すべき事項はさほど難しいことがなく、法律や債務整理の知識のない一般の人が十分に対応できるレベルなのです。
また、手続きが進められる過程においても、一般の人ではでは理解も対応もできないといったことは起こりません。
しかも、もし難しいことがあれば担当の調停委員や裁判所の職員にたずねることができます。
特定調停と同様に裁判所を介して行う自己破産や個人再生の手続きでは、厳格な手続き進行が要求されることから弁護士や司法書士でなければ的確な対応や処理はできません。
自分でも特定調停ができる理由② 調停委員が債務者と債権者の間に入ってくれること
法律の知識がない債務者でも自分が特定調停に取り組める理由は、もう一つあります。
それは、特定調停では債権者と債権者の間に裁判所の「調停委員」が入り、両者が合意できるよう話合いを促進し、利害を調整してくれることです。
手続きは調停委員で構成する調停委員会が主導して進めるのですから、債務者が自主的に何かをしなければならないといったことは全くありません。
債務者が債権者と直接交渉や話合いをする債務整理では、どうしても、借金返済の義務をかかえている債務者の立場が弱くなってしまいます。
しかし、特定調停の場合には、裁判所の調停委員が債務者に代わって各債権者と交渉をすることから、債務者と債権者が対面して話し合うようなことはありません。
こうしたことから、債務者に法的な知識がなくても特定調停は可能なのです。
特定調停で借金はどれくらい減額できる?
この質問に対しては、「借入期間(取引期間)や金利など、個々の借金の状況によって異なってくることから、いくら減額できると一概には言えません」というのが答です。
一般には、借入期間が最低でも3年程度ないとほとんど減額されないので、借入期間が3年よりも短いケースでは特定調停を行うメリットはないといわれています。
では、特定調停での減額はどのように行われるのでしょう?
特定調停での減額の可能性は、具体的には次の2つあります。
①引き直し計算による減額
特定調停での「引き直し計算」は、過去の金利を現在の利息制限法の金利で見直すことで本来支払うべき正しい借金額を確定させるために行われます。
この引き直し計算を行うことで債務者の正確な借金額が判明しますので、過払い状態になっていた場合には借金額が減額されるのです。
なお、特定調停では過払い金の返還を請求できません。
従って、過払金の返還を請求する場合はいったん申立自体を取り下げ、別の方法で過払い金の返還請求をしなければなりません。
②交渉による減額
特定調停での交渉は、債務者と債権者が直接行うことはありません。
債務者と債権者の間に存在している調停委員が、債務者と債権者の話を公平な視点で判断します。
ですから、債権者が不利な条件で和解させられる心配はありませんし、返済能力に見合った減額交渉が可能です。
とはいえ、公平な視点で判断する調停委員が存在していることで、思い切った減額交渉をできないともいえます。
思い切った減額を提案しても調停委員がその妥当性を認めてくれなければ、債権者に提示されることはありません。
特定調停での交渉は調停委員を介したいわば間接交渉ですから、減額が実現するかどうかは一般にいわれる債権者次第というよりも調停委員次第といえるでしょう。
特定調停の費用と裁判所に出向く回数は? :まとめ
・金額は裁判所によって異なるが、特定調停の費用は次のとおり。
①収入印紙代:貸金業者1社当たり500円
②予納郵便切手代:貸金業者1社当たり420円
・裁判所へ出頭しなければならない回数は、およそ月1回のペースで3~4回というのが一般的
特定調停は法律の知識がなくてもできますか?
・特定調停は、次の理由に因り、申立人に法律の知識がなくても自分でできる。
①手続きが簡単であること
②調停委員が債務者と債権者の間に入ってくれること
特定調停で借金はどれくらい減額できる?
・借金の減額は個々の借金の状況によって異なることから、いくら減額できると一概には言えない。
・特定調停での減額の可能性は次の2つ。
①引き直し計算による減額
②交渉による減額
特定調停の利用者が減少しているって本当?
この質問に対する答からお伝えしておきましょう。「特定調停の利用者数は、2003(平成15)年をピークに現在まで減少し続けています」というのが答です。
特定調停は、法律に詳しくない一般の人でも低額で利用できる債務整理手続きの1つとして、2000(平成12)年にスタートしました。
利用者がピークに達した2003年には、年間で50万件以上の特定調停が申し立てられています。
しかし、その後は毎年度平均で約10万件ずつ減少を続け、2008年度には約10件まで減少しました。
直近のデータはないのですが2011(平成23)年度:11,351件・2012(平成24)年度:5,492件といった状況ですから、昨年度あたりは1,000件程度と推測されます。
特定調停の利用者が減少している理由
なぜ、これだけ特定調停の利用者が少なくなったのでしょうか?
以下、特定調停の利用者が少なくなった理由についてお話しましょう。
2003年以降に特定調停の利用者が減少している理由について、詳細に調査した情報は公開されていません。
原因は様々あるようですが、専門家によれば「代表的な理由は、特定調停のかかえるデメリットにある」といわれています。
一番のデメリットは、調停委員が債務整理の専門家ではないことです。
相談する相手の質が低いのです。
特定調停のかかえる他のデメリットについては以下の記事をご覧ください。
特定調停の利用者が減少しているって本当? | 借金道
今は任意整理の費用が安くなってきていて、競争の原理で借金相談の質も向上していますので、個人的には任意整理を視野に入れて、まずは債務整理の無料相談を受けてみられるのがベターな方法だと思います。
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