やさしさ

人のやさしさ

その日は外出の予定があるのに準備が遅れていました。やっとこさ支度が終わり、急いで

服着がえて、持ち物用意して駐車場まで猛ダッシュで走ります。時計は5時、あと30分

後には人と待ち合わせがあります。車のエンジンかけて暖気する間もなくバックして

駐車場を出・・・ドコッ・・・ぎゅるぎゅるぎゅる!!ほへっ!?( ̄□ ̄;)

何”ドコッ”って!?スクランブル発進しようとしてるのに一体何がおこった?

車を降りて後ろ見ると駐車場の出口の段差で左後輪を思いっきり乗り上げてました。

さ、最悪ゥ・・・。シロウの停めてる駐車場は道路より少し高くなっていて、駐車場の

出入り口のとこだけ緩やかな下り坂になっていて、その下り坂の両脇に高さ30センチ

位のブロックがあり見事に左後輪の付け根部分がパーフェクに乗り上げてしまってます。

「うわーどうしようかな」思わず独り言出ます。駐車場の出口スペースは一箇所しかなく

シロウの車だけで完全に塞いでしまっています。とにかくどけないと・・・。車に積んでる

ジャッキを見ようとしていると、他の車が同じ駐車場に入ろうとしてきました。

シロウ「あっ、すみません。今はまってしまって。」女の人です。

女の人「あ、そうなんですか」ブォン。駐車場に入れるのを諦め、

あっさり行ってしまいました。冷たいなぁ。ま、仕方ないか。こっちが迷惑かけてんだし。

もう一回車乗ってバックしたり、前に進もうとしましたがタイヤが空転して進む事も戻る事

もできません。車のタイヤって一個空転してるとその隣のタイヤも動かなくなってしまいます。

なんとか空転しているタイヤと地面との間に大きな石とか入れて動くようにしようと思い、

はめ込もうとしますがうまくかみ合わずにまた空転してしまいます。どうしよう・・・。

JAFの会員じゃないから1万3千円位は取られるだろうけど呼ぼうかな。でもそんな金

全然ないしー。でもこのままここではまってると誰もこの駐車場の人出れないし入れないし。

「どうしたの?」えっ?おばちゃんが声かけてきてくれました。

シロウ「あ、タイヤがハマってしまって・・・」

おばちゃん「あら、まぁ大変・・・」あれ?なんかこのおばちゃんどっか

で見たこと・・?

シロウ「いやお騒がせしてすみません。多分大丈夫ですんで。」

空転してるタイヤに石をあて、また車に乗り込みます。ぎゅるぎゅるぎゅる

・・・くそ、またダメか・・・。

おばちゃん「前にもいけないの?」(;・∀・)ダダイジョウブ・・・?

シロウ「ええやってみたんですが動かないんですよ。ジャッキ入れてその間にでかい石入れて

みます。」

おばちゃんは心配そうに見てくれてますが、こーゆー作業は一人でやるしかありません。

おばちゃん「これ(車)持ち上げてこっちにやれればいいのにねぇ」

シロウ「ハハ、それはさすがに無理ですよ。重いですし。」

ジャッキを回そうとして工具を使いますが、使い方がよくわかりません。(・ェ・;)

シロウあんまり整備とかした事ないんですよ(笑)しばらく悪戦苦闘してるとなんとか車が

少し持ち上がってきました。よしこれで石が入る!石を入れます。

シロウ「あ、すみません。ゆっくりタイヤ回しますんで、空転してたら言ってもらえますか〜?」

おばちゃん「いいよー」

シロウ「踏みマース」

おばちゃん「あーダメだねぇ。回っちゃってるよ。」

くそーどうしよー。誰かが懐中電灯持ってきてくれました。

シロウ「あ、ありがとうございます。」

…知らない兄さん「どうしたの?」

シロウ「いや、すみません。ちょっとは乗り上げてしまいまして。」お兄さんの方を脇目も振

らずにシロウはなんとかはめ込むモノを探しにいきます。

うーんどうしたらいいんだ。シロウは引っ越してきてココ地元じゃないから手伝ってもらう友達

もいねーし。自力であと、20分やってできなかったらJAFだな。今度はブロックを間に入れて

タイヤを回します。ん、おろろ。何か見物人増えてない?なんか見ると14、5人位

シロウのはまった車の周りにいます。

知らないおじさん「これ皆で持ち上げればいいだろ。」

シロウ「えっ!?すみません。いいんですか?」

知らない兄さん「ここで持ち上げてこっちにおろすぞ。」

知らないおじさん2「おぅ、軍手使いなよ。」

シロウ「えっ!?あ、ありがとうございます。」

知らないおじさん「じゃせーのでこっちにずらすぞ!」

ええっシロウも持ちますって、ちょっと待って。

知らないおじさん「せーの」

ぎゅい(うわっホントに車持ち上がった)

ドスン。

誰かが掛け声をかけてくれて車を皆さんで持ち上げてくれて脱出!

おお、取れたーーー!!!

シロウ「ご迷惑おかけしてすみませんでした。」

シロウ「本当にありがとうございます。」いつの間にか住宅地のなんでもない駐車場に

20人位の人だかりが出来てました。

シロウ「ありがとうございます。」

シロウひたすら御礼言って回ります。もう、どうしていいのかわからない(笑)

知らないおじさん「ああ、イイって、イイって」

シロウよりもずっと若い子も手伝ってくれてたみたいです。散っていかれる優しい人達の

背中に何度もお礼言います。とりあえず、待ち合わせしてた人の方に行かなくければと思って

車を出しました。待ち合わせの人の方に向かいます。しかし、向かってる途中である考えが

浮かんできました。

(ていうか、あんなに手伝ってもらってジュースの1本もなしかい!?オレ?)

(義理欠いた事をしてんじゃねーよ、オレ!オレは親からそんな風に育てられたんじゃないっ)

(でも全然誰が誰かわかんないな…)(あ、そういえばあのおばちゃん→(;・∀・)、前に挨拶

した角の家の人かも)(あの人だったら今の人達がどこに住んでるかわかるかも)

待ち合わせしてた人に電話して事情を話し、謝ります。車を引き返し、(お金は全然ないけど)

ジュースを買い込みます。おばちゃん家につきます。

シロウ「さっき車がハマって助けてもらった者なんですが」

さっきのおばちゃんは角の家の方でしたが、娘さんが出てきてもう

仕事に行ったとの事でした。ていうかこの娘さん一番最初に行ってしまった人だ。

娘さん「母にお向かいの人が駐車場で車がハマッってるって言ったら助けたいって。」話を聞く

とこのおばちゃんが人を呼んで回ってくれたそうだ。この人のお母さんが助けてくれたのか。

えっ、前に少し話しただけのオレを覚えててくれたのか。他の人の家を聞きますが、通りすがりの

人が多かったようで、3件しかわかりませんでした。2件目、飯屋のお客さんと店主さん。

シロウ「先ほど〜」

お客さん「あ〜さっきの、お礼なんていいよ〜」

シロウ「あ、ジュース買ってきましたので飲んでやって下さい。」

お客さん「いいって、いいって持って帰って君が飲みなよ。」

シロウ「いえ、そういうワケには・・・ここに置いときますんで。」

お客さん「君がありがたいって思うんだったら、誰か他の人に優しくしてやってくれたらいいから」

シロウ「・・・ありがとうございました!」

精一杯頭下げてお礼をします。他に多分ココっていう人の家にも行きましたが留守でした。

世の中イヤな人ばっかりじゃなくって、いい人もいますね。正直言うと、シロウは今住んでる

町があんまり好きじゃありませんでした。車がないと満足に生活もできないような不便な土地

だなーとかやっぱり地元の方がいい人いっぱいいたよなーとか。でもなんかこの一件でちょっと

見方変わりました。シロウの家の近くにも普段話せなくてもいい人住んでるんだって。なんか

あんな風に言える人カッコいいなって、こんな風に”やさしさ”を分け合えたら、もっと世の中

よくなっていくんじゃないかなーと思いました。自分も関わった人に、こんな風に当たり前に

やさしくできればいいなーと思います。

次は流れるカレーです

   
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