自分で特定調停を申し立てる方法
自分で特定調停を申し立てると、任意整理の依頼費用を節約でき、もっとも安い手続き費用で債務整理をする事ができます。
次の3つのテーマで自分で特定調停を申し立てる方法をお話をします。
- 特定調停はどのように申し立てればいいの?
- 特定調停手続きで強制執行を止められますか?
- 特定調停の過程で過払い金のあることがわかった場合、どうなりますか?
特定調停はどのように申し立てればいいの?
ここでは質問の答を兼ね、個人が申し立てる場合どのようにすれば特定調停を申立できるかを、いくつかの項目に分けて解説します。
なお、特定調停の手続きの詳細は簡易裁判所によって運用が異なる場合があります。
従って申立をする場合は、事前に申立を予定している簡易裁判所に問い合わせてください。
①特定調停を利用できる人
特定調停を申し立てるには、次の2つの条件を満たしていなければなりません。
・現在の借金が、減額された場合は3年程度で返済できる金額の人
・特定調停後も継続して返済できる収入を得る見込みがある人
②申立先裁判所
特定調停の申立は、債権者の住所(居所・営業所や事務所の所在地など)の区域を受け持つ「簡易裁判所」に行います。
なお、相手方が複数で一つの簡易裁判所に該当しない場合でも、いずれかの債権者の住所などを受け持つ簡易裁判所ですべての事件を取り扱うことがあります。詳細は申立予定の簡易裁判所に問い合わせください。
③必要書類
特定調停を申し立てる場合には、次の書類を提出しなければなりません。
なお、用紙は裁判所に出向くか簡易裁判所のホームページからダウンロードして入手します。
また、提出する書類は、ペンまたはボールペンで記入するかパソコンを使って作成したものでも受け付けてくれますが、鉛筆書きは受け付けてもらえません。
・特定調停申立書
・財産の状況を示すべき明細書
・その他特定債務者であることを明らかにする資料
・関係権利者一覧表
なお、申立の内容によっては、書類の追加提出を求められる場合があります。
④費用
特定調停を申し立てる際には、次の費用を負担しなければなりません。
ただし、金額は裁判所によって異なる場合があります。
・収入印紙代:貸金業者1社当たり500円
・予納郵便切手代:貸金業者1社当たり420円
ですから4社の貸金業者を相手に調停を申し立てる場合は、(500円+420円)×4社=3,680円の費用がかかるのです。
なお、書類の提出や印紙の購入や予納郵便切手代の納入の窓口は、それぞれの簡易裁判所で確認してください。
特定調停手続きで強制執行を止められますか?
この質問に対しては、「特定調停を申し立てると、手続き中は強制執行を止められます」というのが答です。
特定調停には「執行停止の制度」があることは、この手続きの代表的なのメリットとの1つに挙げられます。
たとえば債権者が、給料を差し押さえ・持っている不動産の競売・車などの所有物の差し押さえといった権利を行使してきた場合、特定調停ではこれらの強制執行を停止させられるのです。
しかし、この執行停止の制度を利用するためには、単に特定調停の申立をするだけでいいというわけではありません。
特定調停の申立とは別に、「強制執行停止の申立」をする必要があります。
強制執行の停止申立てを行うためには、「強制執行停止申立書」の提出が必要です。
強制執行停止申立書の用紙は、簡易裁判所に出向いて受け取るかホームページからダウンロードできます。
そもそも強制執行とは、債権者に認められた法的手段に基づく債権回収です。
債務者の返済が滞ると、債権者は裁判所を介した法的手段での債権回収ができます。
具体的には債権者が裁判所に支払督促や訴訟を申し立てるケースが多いのですが、裁判所から「債務名義」を入手すれば強制執行ができるのです。
この債務名義とは債務者に対して強制執行することを裁判所が許可した公文書のことをいい、強制執行できる権利の範囲(金額)、債権者や債務者が記載されています。
強制執行は、執行機関が可能かどうかを独自に判断して行うのではありません。
債務名義に基づいて行うため、債権者が強制執行をするためには債務名義を手に入れる必要があるのです。
このように債権者が債務名義を持っていれば、返済の滞納後、裁判所に対し債務者の財産を強制執行するよう求められます。
たとえば給料などが差し押さえられてしまうと、分割で支払いをしたいと思っていてもそれができなくなってしまいます。
また、住んでいる住居を競売にかけられると今夜からの宿泊場所も失い、債務整理をすることで債務者の経済的更生を図ることさえできません。
そこで、特定調停においては、手続中の強制執行を停止させられる執行停止の制度が用意されているのです。
特定調停の過程で過払い金のあることがわかった場合、どうなりますか?
「過払い金が発生していることが明らかになっても、特定調停の手続き内でその返還請求をできません」というのが質問に対する答です。
特定調停手続き内では過払い金の返還請求ができないとしたら、どのような方法で過払い金の返還請求をすればいいのでしょう?
具体的には、次の3つの方法があります。要約して説明しておきましょう。
①調停外で、過払い金の返還請求を申し立てる。
過払い金が発生しているかどうかは、手続きでの引き直し計算で明らかになります。
しかし、過払い金が発生していても、特定調整でその返還を請求できません。
そこで過払い金請求は、特定調停と無関係に、債権者に対して調停外で直接請求して個別に交渉をするのです。
債権者との合意ができればその内容に沿って合意書を作成し、過払い金の返還を受けられます。
②特定調停とは別に、過払い金請求訴訟を起こす。
過払い金が発生していた場合は特定調停をすすめながら、別途、「過払い金返還請求訴訟」を起こせます。
訴えるのは債務者の居住地を管轄する裁判所で、訴額が140万円を基準に超える場合は地方裁判所、下回る場合は簡易裁判所です。
過払い金請求訴訟を起こした場合には、特定調停の期日と過払い金請求訴訟の期日の両方とも裁判所に出廷する必要があります。
③特定調停後に、過払い金返還請求の手続きを申し立てる。
特定調停が終わった後に過払い金請求ができるかどうかは、判例でも統一的な見解は示されていません。
しかし、平成27年9月の最高裁の「清算条項は過払い金に及ばない」とする判決によって問題が解決したといえそうです。
とはいえ、特定調停後に過払金の返還請求ができるかどうかは、特定調停の合意内容や合意方法によっては過払い金請求権を喪失するおそれがあるので注意が必要です。
特定調停後に「過払い金返還請求」の手続きを申し立てる場合は、法律の専門家への事前の相談をおすすめします。
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特定調停に関して知っておきたいこと:まとめ
特定調停はどのように申し立てればいいの?
・特定調停を申立には、次の2つの条件を満たしていることが必要
①減額された場合は3年程度で返済できる借金額の人
②特定調停後も継続して返済できる収入見込みがある人
特定調停手続きで強制執行を止められますか?
・特定調停には「執行停止の制度」があるので、手続き中は強制執行を止められる。
・執行停止の制度を利用するためには、特定調停の申立とは別に、「強制執行停止の申立」が必要
特定調停の過程で、過払い金のあることがわかった場合、どうなりますか?
・特定調停手続き内では過払い金の返還請求ができないが、次の3つの方法がある。
①調停外で過払い金返還請求を申し立てる。
②特定調停とは別に過払い金請求訴訟を起こす。
③特定調停後に過払い金返還請求を申し立てる。
特定調停は基本的に返済していく方法です。
自分で自己破産をして、借金全体をチャラにする方が、より効果は高いので、自己破産も考えられる方は以下の自己破産についてのページもご覧ください。
自己破産を自分でやる方法~債務整理体験談 | 借金道
自分で特定調停に関して知っておきたい用語
今回から何回かにわたって、「特定調停」に関連して使用される専門用語を紹介します。
特定調停を理解するうえでお役立てください。
なお用語の中には、他の債務整理手続きにも共通に使用される用語も含まれている点をご承知おきください。
①事件受付票
特定調停を申し立てる際には、特調停申立書・関係権利者一覧表・財産の状況を示す明細書などの必要な書類を作成します。
それらの書類を揃え、原則として債権者の所在地を管轄する「簡易裁判所」に申し立てます。
書類が欠けている場合には、全て揃えてから再度裁判所に出向かなければなりません。
書類を提出すると、裁判所からは「事件受付票」が交付されます。
「事件受付票」とは、裁判所に訴訟などを提起した場合に発行される、事件番号等が記載された書類なのです。
②調停
調停とは当事者間に紛争がある場合、両者の間に入って妥協点を見いだし、争いの解決をはかることをいいます。
調停には「民事調停」と「家事調停」があり、民事調停の特例として存在しているのが「特定調停」です。
裁判(訴訟)は、当事者間の争いごとを裁判所の判決にゆだねて、法的にトラブルを解決します。
しかし、調停は任意整理と同様に裁判所で行う手続であっても、話合いで解決することが目的です。
調停が当事者間の争いごとを話合いで解決できるのは、「調停委員という第三者が当事者間に存在すること」と「調停が裁判所という場所で行われこと」といわれています。
なお、調停においては、基本的に当事者が直接話し合うことはありません。
③特定調停
特定調停とは、借金の返済が困難な債務者の申立で簡易裁判所が債務者と債権者との話合いを仲裁し、債務者の借金を整理して生活を立て直せるよう支援する債務整理手続きの1つです。
特定調停では任意整理と同様にこれまでの取引履歴を債権者に開示してもらい、借金当初にさかのぼって引き直し計算をします。
この引き直し計算によって借金総額を確定し、調停委員を介して債権者と債務者が「返済額・返済方法・返済回数」を話し合うのです。
なお、特定調停は和解後に返済をすることが前提であり、利用は次の2つの条件を満たす人に限られます。
・現在の借金額が、減額後に3年程度で返済できるだけの借金額であること
・和解成立後に継続して返済できる収入が期待できること
④調停委員
調停委員は、裁判官または調停官と共に「調停委員会のメンバー」として、債務者と債権者双方の話合いを調整して問題解決に当たる人です。
調停委員は「調停に一般市民の良識を反映させるため」に、専門的な知識や豊富な経験を持つ人の中から最高裁判所によって選ばれています。
具体的には弁護士・医師・大学教授・公認会計士・不動産鑑定士などの専門家のほか保護司・カウンセラー・消費生活アドバイザーなど各分野から選ばれた人たちです。
調停委員は民事調停委員と家事調停委員に分かれていますが、その基本的な役割は同じといえます。
つまり、調停委員とは債務者と債権者の双方の主張を聞いて相手に伝え、どのように解決すればいいのかを一緒に考える「調整役」のような存在です。
⑤調停調書
調停調書は、調停が成立した際に書記官によって作成されるもので、話合いで合意した内容が記載されている書類です。
調停調書に記載した内容は裁判の判決(確定判決)と同じ効力を持つことから、債務者・債権者とも調書内容の順守義務が発生します。
従って、調停調書に記載した内容を守らない相手には、強制執行手続きで強制的に約束を履行させることが可能です。
調停調書は債権名義(強制執行できる権利や権利内容を記載した公文書)と見なされるので、訴訟手続きをしないでも強制執行ができます。
なお、強制執行は債権者に代わって国が強制的に債権を回収するので、債務者の財産(給料や不動産・自動車など)は差押えや取立てによって没収されてしまうのです。
⑥特定調停申立書
特定調停申立書は、簡易裁判所に特定調停を申し立てる際に「特定債務者であることを明らかにする資料等」や「関係権利者一覧表」といった書類を添付して提出する書類の1つです。
用紙は提出予定の簡易裁判所の調停センターで受け取るか、インターネットのホームページからダウンロードして入手できます。
特定調停申立書には「申立人」「相手方」「債務の種類」「借受金額等」などの欄が設けてあり、そこに必要事項記入して提出しなければなりません。
相手方が複数ある場合には相手方ごとに作成して、それぞれ正本・副本2部ずつ必要です。
なお、特定調停申立書提出の際には、申立書1部につき500円の収入印紙を添付しなければなりません。
⑦出頭・出廷
出頭と出廷は、それほど明確に区別して使い分けされているとはいえません。
しかし、一般的には、次のように使い分けられることが多いといえるでしょう。
「出廷」:被告や参考人として法廷(裁判官が裁判を行うところ)に出ることです。
「出頭」:裁判所に限らず主に役所や警察署など特定の場所に本人が出向くことです。
「裁判所に出廷する」といえば裁判官が裁判を行っている法廷内に入ることを意味しますが、「裁判所に出頭する」といえば事務所や会議室に出向くことです。
だからといって、たとえば書類を提出するために裁判所に出向くことを「裁判所に出廷する」と表現しても、必ずしも誤りとはいえません。
⑧清算条項
調停調書には合意事項の1つとして、「調書に定めること以外に申立人と債権者には、互いに債権債務関係がないことを確認する」といった内容の条項が記載されます。この条項が、清算条項と呼ばれるものです。
調停調書に記載された内容は裁判の確定判決と同じ効力を持つのですから、債務者も債権者も調書内容の順守義務があります。
この清算条項が記載されていることで、問題になるのが過払い金の取扱いです。
かつては、調停調書に清算条項が記載されていると、特定調停後に過払い金返還請求は裁判所によって認められないことも多かったようです。
しかし平成27年9月、最高裁によって「清算条項は過払い金に及ばない」との判決がくだされました。
⑨17条決定
民事調停法には、調停で話し合いが完全にまとまらなくても、裁判所が職権で解決内容を決定できるとの定めがあります。
裁判所が調停委員会の意見を聴いて、ある程度双方が納得できる返済計画であると判断した場合に、調停に代わる決定としてその返済計画にそった決定をするのです。
この決定は民事調停法17条に基づくことから、一般に「17条決定」と呼ばれています。
17条決定がくだされると、債権者は特定調停に同意したのと見なされるのです。
しかし、告知を受けた日から2週間以内に債権者から異議の申立があると、17条決定は効力を失ってしまいます。
調停の効力が失効した場合は、債務者は他の債務整理手続きの検討が必要です。
⑩債権名義
債務名義とは、債務者に対して裁判所または執行官が強制執行することを許可した公文書のことをいいます。強制執行を行うにはこの文書が必要です。
債務名義には、強制執行できる権利や範囲(金額)、債権者や債務者を記載されています。強制執行を行うには、この債務名義が必要です。
強制執行は、執行機関が独自に可能か判断して行うのではなく債務名義に基づいて行うため、強制執行をするためには債権者は債務名義を得る必要がある。
債務名義として認められる文書は民事執行法22条で定められている次のような文書です。
①確定判決
②仮執行宣言付判決
③仮執行宣言付支払督促
④調停(和解)調書
特定調停について、詳しく解説しましたが、個人的には債務整理をしようと考えるなら、特定調停よりも任意整理する方がおススメです。
特定調停よりも任意整理をおススメする4つの理由 | 借金道
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